KINGSGLAIVEセミナーおさらい ワープエフェクト – サンプルhiplcファイルあり



三連休でやっと時間が取れたこともあり、少し前に行われたIndyzone主催のHoudiniセミナー「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV メイキングストーリー」のおさらいをしています。

というわけで、とりあえず手始めに今日はワープエフェクトに関してです。

今回もサンプルファイルを付けてみました。
完全な再現とまでは行かなくとも、ボリュームと移流の扱い方に関しては、だいたい再現できていると思います。
興味のある方はぜひ覗いてみてください。

■ダウンロード(One Drive)
MYAM_imitation_FF_KINGSGLAIVE_WarpFX

※ノード名がセミナー中の説明と合ってなかったので、修正しました

zipファイル解凍後に出てくるHoudiniProjectフォルダにSetProjectしてからシーンを開いてください。


概要

ワープエフェクトは、5つの単純な要素を組み合わせて作ります。

  • Spark:火花
    荒いボリュームからパーティクルへ力を渡し、移流して動かします
    その後、TrailSOPなどを使用して火花っぽい見た目を作ります。
  • Ash:灰
    Spark同様に移流してパーティクルを動かします。
    その後、灰オブジェクトをパーティクル上にコピーします。
  • Fire:小さな火の玉
    Spark同様に移流してパーティクルを動かします。
    その後、あらかじめ作成しておいた火の玉シミュレーションのキャッシュをパーティクル上にコピーします。
    その際、キャッシュのスタート時間をランダム化して見た目にばらつきをもたせます。
  • Steam:体から立ち上る蒸気
    Sparkなどで使用する荒いボリュームを複製後に編集し、高解像度化したボリュームを蒸気として使用しました。
  • Crystal:体から飛び散るクリスタル片
    初速と重力によって動く単純なパーティクルにクリスタル片オブジェクトをコピーして作ります。

一見複雑なワープエフェクトは、実は単純な要素を組み合わせて作られています。


シーンファイルについて

スケール調整の手間を省いたので、現実スケールに対しシーンスケールが大きめになっているため、ダイナミクスオブジェクトの動きが若干遅く感じられると思います。


何か間違いなどあればご遠慮無くツッコミください。
とても喜びます。

Houdini – 基本的なデータの取り回し方(サンプルファイルあり)

Houdiniを触り始めた頃、アトリビュートや変数のデータの取り回し方がわかりにくいと感じていました。
中でも特にローカル変数の挙動がよく理解できずに、正しく値を操作できても何だか狐につままれたような気持ちになっていました。

最近はそのようなこともなくなり、意図したとおりに値を操作できるようになってきたので、実践している値の取り回し方を備忘録的な意味で書いてみます。

今回もまたちょっとしたサンプルファイルをつけてみます。

■ダウンロード(One Drive)
MYAM_attributeAccess_exsample


Houdiniで扱うデータのスコープ

Houdiniの中で主にユーザーが直接扱うデータには、以下のようにいくつかの種類とスコープがあります。

  • グローバル変数
  • ローカル変数
  • パラメータ
  • アトリビュート

Houdiniに触り始めた頃、わかりにくいと感じていた部分が、ローカル変数とパラメータとアトリビュートの相互の関係性です。

※グローバル変数は、環境に依存しすぎる気がするので、最近でも極力手を付けないようにしています。(パス文字列の簡略化などに使えばとても便利ですが)
よって、今回の記事では扱いません。


なにがわかりにくかったのか?

さまざまなチュートリアルを見ると、Attribute Create SOPを使い、アトリビュートを作成すると同時にローカル変数も定義して、下流のパラメータエクスプレッションの中でローカル変数を参照して処理をするやり方が散見されます。

これは勝手な印象ですが、特に古いバージョンのチュートリアルで顕著だったように思います。

チュートリアルの後、自分なりに実践してみてうまく値を扱えない時に感じたのが

  • データフローの上流で作ったはずのローカル変数が下流で参照できない・・・
  • と思ったらなぜか使える場合があったりする・・・
  • オペレータの性質から想像するに、マニュアルを引くまでもなく明らかに使えそうに思えるローカル変数が使えない・・・
  • オペレータのリファレンスマニュアルに記載されてるローカル変数が使えない・・・
  • アトリビュートを直接操作したい・・・ローカル変数を参照できない理由がわからない・・・まるで異次元に迷い込んだようだ・・・地獄だ・・・

といったあたりです。
平たく言うと

「ローカル変数が値の操作を混乱させる諸悪の根源」

のように感じていたわけです。


デジタルアセットとローカル変数の罠

また、このローカル変数というやつは、デジタルアセット上で使用できないという、恐るべき制約も手伝って、更に話をややこしくしています。
※ColorSOPのマニュアルに記載あり。
もしかしたら、全デジタルアセットの性質ということではなく、ColorSOPに限った話かもしれません

例えば、Color SOPはデジタルアセットで、Colorパラメータ内ではローカル変数を使用できません。上流で独自アトリビュートを作成し独自のローカル変数を作っても参照できません。

紛らわしいことに、そもそもColorSOP自体、上流で@Cdアトリビュート操作があることを想定していません。あくまでも@Cd操作の開始点として使用する前提です。

このような場合、Color SOPではなくPoint SOPを使用し、その中でローカル変数を参照することで問題なく@Cdアトリビュートを直接操作できます。

このような紛らわしさもまた、一つの地雷と言えそうです。


ローカル変数よ、さようなら

ではどうすればいいのか。

結論を言うと、Attribute Wrangle SOPを介してアトリビュートを直接管理や操作をするのがベストだと考えています。

最近のバージョンでは、VEX周りがかなり進化しています。
Attribute Wrangle SOP内だけでなく、各オペレータのパラメータエクスプレッションでも、VEXのように@記法で直接アトリビュートを参照したり、それができない場合でもpoint関数などを使ってアトリビュートを直接参照する事ができます。

値の管理と操作を、一貫したVEXの世界で行えるのは、この上なくシンプルで理想的です。
今のところこの方法で困ったことは一度もありません。

よって、もう、ローカル変数の出番は無いとすら思います。


まとめ

というわけで、今考えているわかりやすくデータを取り回すための方策は以下の通りです

  • アトリビュートの作成にはAttribute Wrangle SOPを使う
  • アトリビュートの操作にはAttribute Wrangle SOPやAttribute VOP SOPを使う
  • アトリビュートの参照は@記法を使って直接参照する
    またはpoint関数などのアトリビュート値を直接取得する関数を使う
  • ローカル変数は使わない
    $CEXなど便利なローカル変数はあるが、同様のVEX関数もあるのでそちらを使うようにする。

これが同じ悩みを持つ方の一助となれば幸いです。

何か間違いなどあれば遠慮なくツッコミをください。

Houdiniセミナーおさらい – サンプルhiplcファイルあり

先日、「Houdini プロシージャルモデリングテクニカルセミナー」が開催されました。

セミナー中に、CG World 2016年09月号のHOUDINI Cook Bookで掲載された作品「Spine」がどのように作られたかを、著者の秋元氏が自ら解説するという貴重なセッションがありました。

そこで感銘を受け、自分なりの解釈も踏まえつつ真似してみたくなり、早速作ってみました。
記事と解説をすべてトレースするのではなく、VOPで処理されていた場所をVEXで処理するなど、ちょっとだけアレンジしています。
シェーダーまでは手を付けられなかったので、簡易モデルと動きのみです。

今回は実験的に、Houdini Indie 15.5.523 で作成した hiplcファイルを公開してみます。
ファイルには、簡単なモデルと本体モデルとシリンダーの挙動を組み込んであります。
時間経過に伴いウネウネ動く仕込みもしてあるので、再生してみると楽しいかもしれません。

■ダウンロード(One Drive)
MYAM_imitation_spine_hiplc

“NATURE OF CODE” in Houdini – 002 – 力

長い間、仕事ではパイプライン系ツールを書くことが多くなり、幾何学や物理などの数学とはだいぶ疎遠になってしまいました。

最近になって、やっとHoudiniを業務で使用させてもらえる環境が与えられたこともあり、これも良い機会ということで、これからしばらくの間、数学の勉強や復習とリハビリを兼ね、Processingの名著 [NATURE OF CODE] の内容を、Houdiniを使って追いかけていきたいと思います。




 

■動画内容の御品書

  1. シンプルな力
    単純な力を与えて動かす。
  2. 力と質量
    質量を考慮しながらシンプルな力(重力+風)を与えて動かす。
    小さいものほど風の影響を受けやすく水平方向によく動く。
  3. 力と摩擦
    摩擦による減速。
  4. 力と流体抵抗
    Y=0の位置から流体があると仮定し、ポイントが抵抗を受ける。
    この流体の範囲に入った時、ポイントは赤くなります。
  5. 引力(固定アトラクタ)
    原点の位置に引力を発生するポイントを配置し固定。
    その他のポイントは原点のポイントと引き合う。
  6. 引力(ポイントの相互作用)
    各ポイントはそれぞれ相互に引き合う力を持っている。
    質量や引力の設定にもよるが、小さな塊ができ、それぞれの塊が引き合い徐々に大きな塊になっていく。(ポイント半径に合わせたコリジョンは設定していないので、実際には、塊は大きくなりません。)

2.0 Houdiniの単位系

Houdiniは標準的なSI単位を採用している。
https://www.sidefx.com/docs/houdini15.0/dyno/about
http://www.cranenet.or.jp/tisiki/si.html

2.1 力とニュートンの運動の法則

力とは、質量を持った物体に加速度を生じさせるベクトル。

・ニュートンの運動の第1法則(慣性)

静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は不平衡力の影響を受けないかぎり、一定の速さで一定の方向へ運動を続ける。

・ニュートンの運動の第3法則(作用・反作用)

力は常に反作用が対になって生じ、その強さは等しく、向きは正反対である。

-F[N]

 押し合う物体の質量が違う場合や、接地面の摩擦力が違う場合、同じ力が加わってもそれぞれの物体が静止し続けるとは限らない。

2.2 力とProcessing

・ニュートンの運動の第2法則(運動方程式)

質量(m)に加速度(A)を掛けあわせると力(F)になる。

・重量と質量

  • 質量(m):物体内の物質の量[kg]
  • 重量(W):物体にかかる重力[N]
  • 密度(Density):単位体積(m^3)あたりの質量(kg)

2.3 力の積算

書籍では質量を1として計算し、F=Aとして簡単化する。

通常、物体にはいくつかの外力が同時に作用する。
そのような場合、全外力の合計値を使用する。
物体に働く力は、特殊な状況を除いて常に変化し、積算されないので、毎フレームで新たな値を計算して使用する。

windForceやgravityForceなどを追加してみる。

2.4 質量

先に計算された外力を質量で割ることで、各ポイントごとに設定された質量を考慮したシミュレーションが行われる。

2.5 力の作成

・力の作り方

  • 直接指定
    自由に直接指定する
  • シミュレーション
    物理公式などを利用し、計算する。

2.6 地球と重力と力のシミュレーション

この時点では、質量が小さいものほど重力の影響を強く受けるようになっている。
物体の落下速度は、その質量にかかわらず一定。
重力加速度の式から正しい加速度を求めて適用するため、重力に質量を掛けあわせてる。

2.7 摩擦

摩擦は散逸力(非保存力)。

※散逸は、抵抗力によって運動エネルギーを熱エネルギーに変換する現象。
散逸力とは、摩擦力などのエネルギーを減少し、別の力に変換させる力。
車のブレーキなどは運動エネルギーを熱エネルギーに変換。

・摩擦の種類

  • 静止摩擦
    接触面に対し静止している物体が受けている摩擦
  • 動摩擦
    動いている物体が接触面から受ける摩擦

摩擦の方向は速度方向の逆。

・摩擦の公式

・公式を使用する際のポイント

  • 右辺を計算し、左辺に代入する。
  • 変数がベクトルかスカラーかを見極める。
  • 記号が隣り合っている場合は乗算を表す。

■各項の意味

  • F friction:摩擦により働く力

  • μ:摩擦係数

    特定の表面上に生じる摩擦力の強さ。

  • N:垂直抗力
    物体が接触面から受ける反作用で接触面に対して垂直方向に物体を押し返す力。
    物体が接触面から受ける垂直抗力の大きさは物体の質量に比例する。
  • v:正規化済みの速度ベクトル
    式中の-1と掛けわせることで摩擦による力の発生する方向を取得する。
    この場合、速度ベクトルの真逆方向に摩擦力による力が発生する。

2.8 空気抵抗と流体抵抗

物体が空気や液体(流体)の中を通り抜けるとき、抵抗力が働く。
これは、粘性力(Viscous Force)や抗力(Drag Force)、流体抵抗(Fluid Resistance)などと呼ばれる。

・流体抵抗の公式

■各項の意味

  • F drag:流体を物体が通り抜ける際に働く抗力
  • 1/2:定数
  • ρ(rho):流体の密度
  • v^2:速度ベクトルの長さの2乗
  • A:進行方を向いている面の表面積
  • Cd:抗力係数、自由に決定する
  • v:正規化された速度ベクトル

2.9 重力

■重力の公式

■各項の意味

  • F gravity:重力
  • G:万有引力定数、独自の値を使っても面白い。
  • m1とm2:相互に作用する2つの物体が持つそれぞれの質量。
  • r:物体間の距離ベクトルを正規化したベクトル。物体同士が引き合う方向。
  • r^2:物体間の距離の2乗。
    物体同士が引き合う力は距離が長いほど弱くなり、近いほど強くなる。

2.10 相互引力と反発

2.9の計算を、各ポイント間で計算し、毎フレーム全ポイントの影響を合計して適用する。


何か間違いがあればツッコミをいただけると助かります。

“NATURE OF CODE” in Houdini – 001 – ベクトル

長い間、仕事ではパイプライン系ツールを書くことが多くなり、幾何学や物理などの数学とはだいぶ疎遠になってしまいました。

最近になって、やっとHoudiniを業務で使用させてもらえる環境が与えられたこともあり、これも良い機会ということで、これからしばらくの間、数学の勉強や復習とリハビリを兼ね、Processingの名著 [NATURE OF CODE] の内容を、Houdiniを使って追いかけていきたいと思います。




1.1 ベクトルなしでは始まらない

・バウンドするボール

ポイントの速度と移動可能な範囲を指定。
ポイントは毎フレームで指定した速度に相当する距離移動し、範囲外に出た時に速度を反転させる。
上図では、Trail SOPとCopy SOPで軌跡を見やすくしている。

ベクトルクラスを使わないので、まとめて計算ができず、とても面倒。


1.2 Processing プログラマのためのベクトル

PVectorクラスで速度と可動範囲を定義。
Houdini上では、速度と可動範囲をベクター型の変数で置き換えた。
ついでに、3D上で動くようにした。

ベクトルクラスを使うと複数の値をまとめて計算できるようになりとても楽です。

※ベクトルの計算についてはあまりにも基本的すぎるので時短のため詳細は省きます


1.3 ベクトル加算

ベクトル同士の加算。
ProcessingでのPVector.add()を解説。


1.4 その他のベクトル演算

ベクトルクラスのメンバメソッドの解説。
Processingでは変数型にメンバメソッドが含まれる。
Houdiniでは、VEX関数を用いて同様の処理を行う。

  • ベクトルクラスのメソッド
    add(),sub(),mag(),normalize()など
  • ベクトル減算
    ベクトル同士の減算を解説。
    ProcessingでのPVector.sub()を解説。
  • ベクトル乗算(除算も)
    ベクトルとスカラーの乗除算の解説
    ProcessingでのPVector.mult()とPVector.div()を解説。


1.5 ベクトルの大きさ

ベクトルの長さはピタゴラスの定理で求める。
ProcessingでのPVector.mag()を解説。


1.6 ベクトルの正規化

ベクトルを単位ベクトルにする。
ProcessingでのPVector.normalize()を解説。


1.7 ベクトル運動:速度

速度は位置に影響を与える。
Moverクラスを定義する。

  • Moverオブジェクトはどのようなデータを持つか
    位置、速度など
  • Moverオブジェクトはどのような機能を持つか
    動く、表示する

※ここでは、Houdini標準アトリビュートの@vや@forceなどを使わず、独自のアトリビュートを用いて、最初から自前で計算します。ただし、@Pは計算結果を代入するために使います。

・コンストラクタを定義する

正しいかわからないけど、Houdinide オブジェクトをクラスととらえた時、そのオブジェクトの動作の核心は内部に含まれるSolver SOPのように見える。
Houdiniオブジェクトのコンストラクタ処理の内容は、Solver SOPの上流にあるすべての要素と言えそう。
コンストラクタの呼び出し(SolverSOPの上流にある処理)は、Solver SOPのStart Frameによって指定された時間に一度だけ行われ、キャッシュされて初期化される。

・動作を定義する

Houdiniオブジェクトが行う毎フレームの動作は、Solver SOPの中で定義する。
ある意味、Solver SOPは毎フレーム実行される関数であると考えて良いと思う。
今回作ったSolver SOP内では、現在のポイントの位置に加える変位を計算し、毎フレーム変異させる処理を行う。


1.8 ベクトル運動:加速度

加速度は速度に変化を与える。

加速度の各種アルゴリズム

  • 等加速度
    事前に加速度を設定し、変化させない。
  • 完全にランダムな加速度
    Solver SOPの中で加速度をnoise関数やRandom関数で変化させる。
  • マウスに向かう加速度
    Houdini上でマウスカーソルの3D座標が取れるかは謎なので、代わりに、特定のポイント位置へ向かう加速度を発生させるアルゴリズムで作ってみる。

速度に制限をかける

現実的に、速度が無限に高まることはないので、一定の速度を超えないように@velocityを抑制し、速度制限する。
下記のような感じ。

f@velocityLength = length(@velocity);

if( f@maxVelocity < f@velocityLength )
{
    vector normalVelocity = normalize(v@velocity);
    v@velocity = normalVelocity * f@maxVelocity;
}

@P += v@velocity;

 

1.9 static関数と非static関数

通常のプログラミングにおけるstaticメソッドに関する解説。
Houdiniオブジェクトはクラスっぽいけどクラスそのものではないので、再現できないとおもわれる。
とりあえずここは飛ばします。


1.10 加速度の対話的処理

加速度のターゲットと各Moverオブジェクトの距離に応じて加速度が変化するように設定。
結果、記事冒頭のムービーのように、なんとなく魚群風に見える映像が出来上がった。

“NATURE OF CODE” in Houdini – 000 – はじめに

長い間、仕事ではパイプライン系ツールを書くことが多くなり、幾何学や物理などの数学とはだいぶ疎遠になってしまいました。

最近になって、やっとHoudiniを業務で使用させてもらえる環境が与えられたこともあり、これも良い機会ということで、これからしばらくの間、数学の勉強や復習とリハビリを兼ね、Processingの名著 [NATURE OF CODE] の内容を、Houdiniを使って追いかけていきたいと思います。



はじめに

I.1 ランダムウォーク

オブジェクトが累積的にランダムな方向に動く動作。


I.2 ランダム・ウォーカークラス

・ランダム・ウォーカークラスを定義

Houdiniでカスタムノードを定義することはクラスを定義することと言えそう。
ただし、現時点では継承等の仕組みがあるか不明なので、あくまでもクラスもどきの定義と解釈しています。

ここでは、まずSubnetをクラスとしてとらえつつ、その内部に、ランダムウォークする点群を複数含むオブジェクトを定義する。

・擬似ランダム値

一般的に、コンピュータ上で乱数を生成するランダム関数は実際には周期性があるので擬似的なランダム関数と言える。
ただし、周期が非常に長いため、実質的に真の乱数計算関数と言って差し支えない。


I.3 確率と一様分布(離散)

HoudiniでVEX関数のrandom()を使った場合、特定の値が出現する確率はほぼ一定。
具体例として、4種類の値を生成するランダム関数があるなら、それぞれの値が出現する確率はほぼ均等で約25%になる。

bandicam 2016-06-12 22-55-14-514

random()から出力される0~1のfloat値を0~9のint値にマッピング。
乱数を1200回発生させ、マッピング後の整数値に対応するIDを持つポイントをその都度+Y方向に移動した結果、多少のばらつきはあるものの、ほぼ均等な値が生成されていることがわかる。
このように、起こりうる結果がほぼ均等に現れる確率の分布を、一様分布と呼ぶ。
他の例としては下記のようなものもある。

  • コイントスの確率
    1/2 = 0.5 = 50%
  • 全トランプ52枚からA4枚のいずれかを引く確率
    4/52 = 0.077 = 約8%
  • 全トランプ52枚からダイヤのカード13枚のいずれかを引く確率
    13/52 = 0.25 = 25%
  • 1つのサイコロを振り、1の目が出る確率。
    1/6 = 0.166 = 約17%

・確率と非一様分布

bandicam 2016-06-12 22-55-21-874

一様分布の項で作成したランダム関数を2つ足しあわせ、値が出現する回数を計測してみる。
結果、グラフは中央値が高く、山なりになるのがわかる。

bandicam 2016-06-12 22-55-26-468

今度は、3つのランダム関数を使って同様の計算をしてみる。
より顕著に、山なりになる。

サイコロを3個振る場合を考えてみると理由は簡単。
合計値が最小の3または最大の18になるのは1または6のゾロ目の時のみで非常に確率が低いのに対し、合計値が中央付近の10になるケースはより多くの組み合わせが考えられる。

・乱数に偏りを持たせる

乱数を元に、予め用意された動作を選択する際、結果に偏りを持たせるには。

  1. 乱数を元に得たい結果がリストにまとめられているケース
    結果がリスト内に登場する回数を操作して確率に偏りを持たせる

    <<擬似コード>>
    results = [1,2,3,4,5] → [1,1,1,2,3,3,4,5,5,5]
  2. 乱数の値の範囲に応じて結果が決定するケース
    結果に対応する乱数の範囲を操作して偏りを持たせる

    <<擬似コード>>
    if random < 0.1:
        return 10
    elif random < 0.2:
        return 20
    else:
        return 30

I.4 ランダム値の正規分布(ガウス分布)

ランダムな要素が平均値付近に集中する確率分布を正規分布やガウス分布(Gaussian)、ラプラス分布(Laplacian)などと呼ぶ。

[参考サイト] NtRand – 正規分布
http://www.ntrand.com/jp/normal-distribution-single/

 例として、無作為に選んだ人々の身長の分布を考える。
百歩譲っていくら確率が0ではないと言っても、身長0.1cmの人や身長10mの人はそうそういない。
平均慎重と言われている165cm付近が最も多くなるはず。

・ベル型曲線

確率の平均[μ]と標準偏差[σ]により求められる、確率分布を表すグラフ。

  • 平均:μ
    起こりうる値の平均値。
  • 標準偏差:σ
    偏差とは、値と平均値の差。
    平均偏差は全偏差の平均。
    標準偏差は、分散の平均の平方根。(※分散は偏差の2乗)

・乱数の生成(random)

HoudiniにおけるVEX関数のrandom()は、0~1の範囲で一様分布の乱数を発生させる事ができる。(その他にも、3Dノイズなども出力できる)

・乱数の生成(noise)

HoudiniにおけるVEX関数のnoise()はシンプルなパーリンノイズ。
正規分布をもとに乱数を発生させる。
ループ中で新たなポイントを作成しながら乱数を発生させ、@P.xに与えていくと、各ポイントは下図のように配置されていく。

図では色が薄く見づらいが、μ=0.5、σ=1の正規分布で乱数が生成され、x=0.5の付近でより高密度にポイントが作成されていることがわかる。
※1マス=0.25


I.5 ランダム値のカスタム分布

  • 分岐条件を乱数をもとに判定(レヴィフライト風アルゴリズム)
    乱数の発生を一様分布でも正規分布でもない独自のものにしたい場合のテクニック。正規分布の乱数中で、時折「突発的」にレンジの大きな乱数を発生させたい場合は、現在の乱数生成の機会が「突発的」なものであるか判定し、突発的であると判断された場合、結果の範囲が大きな乱数を発生させるようにする。

    ## 擬似コード
    incident = random(1)
    if incident < 0.1:
        randValue = random(-100,100)
    else:
        randValue = random(-1,1)

    上の例では、incidentが0.1以下(10%)の確率でレンジの大きな乱数を生成している。

  • 出力が条件に適合するまで乱数の生成を試行する(モンテカルロ法風アルゴリズム)
    値が大きければ大きいほど選ばれやすくしたい場合のテクニック。
    乱数を2つ使い、片方がもう片方より大きかった場合に乱数を出力する。

    def montecarlo():
        while 1:
            r1 = random(0,1)
            r2 = random(0,1)
    
            if r1 <= r2:
                return r2

I.6 パーリンノイズ(よりスムーズな手法)

有機的なものの表現には、ランダム値の中にも連続性が必要になる。
その場合、ランダムかつ連続的に変化する値を出力するnoise関数を使用するとよい。
HoudiniのVEX関数 noise()は、正規分布に近い連続的でランダムな値を返すパーリンノイズ関数で、整数を与えるとすべて同じ値(0.5)を返すようになっているので、引数は極力整数値にしないように注意する。

## noise()の使用例
f@dx = fit(noise(@Time+(@ptnum*0.339)+offset),0,1,-1,1);

・疑問

Mayaの場合、noise()関数は周期性を感じさせない上に、出力される値も-1~1の範囲にきっちり収まるようになっている。
そのため、単純なフレーム番号を引数にするだけで延々と連続的なランダム値を生成し続け、その値を係数にして角度の変化などを計算する際、変化のレンジにただ掛け合わせるだけでよかった。

Houdiniのnoise()関数は、整数値を与えると全く同じ値が返る上に、結果が正規分布で得られるため、Mayaのnoise()関数と全く同じ感覚では使えない。

正規分布のおかげで結果を有機的にしやすい反面、変化幅の上下限をきっちり決めづらくとても気持ち悪く感じてしまう。(例えば毎フレーム何らかのオブジェクトの角度を変化させたい時、0~180度の角度範囲を上下限とし、-1~1の範囲の係数をかけて使いたい場合など)
もしかしてMayaのnoise()に近い関数があるんだろうか?(誰かご存知でしたら教えて下さい)

・パーリンノイズによるランダムウォーク

・2次元のノイズ

パーリンノイズは1~4次元の値を引数に取り、同様に1~4次元の値を出力できる。

・@Cdにnoise(x,y)の結果を適用
832

・@P.yにもnoise(x,y)の結果を適用

※わかりやすくするため、頂点数とカラーのレンジを調整済み


I.7 展望

この章では、自然現象をシミュレートする際に必要となる確率や乱数を学習した。
ランダム性を取り入れることで、より自然で複雑な要素を作成できる。
だがしかし、同じアルゴリズムにばかり頼ってしまうと結果的にパターンが透けて見えてしまい、結果が退屈な仕上がりになる場合もあるので、より多くの手法を身につけ、引き出しを増やし、様々なニーズに臨機応変に対応できるスキルを磨くことが大事。


[資料]

NtRand – 確率分布Navi

確率分布 Navi


http://www.ntrand.com/jp/gallary-of-distributions/


何か間違いなどあればツッコミいただけると喜びます。
よろしくお願いします。

Houdini Crowd System – 003 / Ragdoll + Custom force テスト

また、絵的に少しどうかしている映像をアップしました。

今回は、エージェントをただラグドール化するのではなく、Stateの遷移を引き起こすボリュームにエージェントが含まれたらラグドール化し、そのボリュームから発せられる力を受けて、任意の方向に飛ばされるように設定するようにしてみました。
動画では非表示にしていますが、足元からエネルギー球がせり上がり、それに触れたUnityちゃんエージェントが吹き飛ばされているように設定してあります。

左に見えている点群がイベントボリューム兼カスタム外力発生器です。
各点から出ている黄色のラインは力の方向です。

この点群を大型キャラの四肢にアタッチするなどしておけば、自然と、大型キャラに暴れるモーションを付けるだけで、群がる群衆をを次々となぎ倒していくような絵が作れますね。

Houdiniのforループを理解する

■ループの種類と用途

  1. forループ
    入力したジオメトリデータ全体を対象に、複数回の処理を繰り返し行う

    (例)
    Copy SOPで複製されたジオメトリ全体を対象に、Mountain SOPの処理を累積的に10回行う。

  2. for-eachループ
    入力したジオメトリ内の個別のピースに対し、同一の処理を行う

    (例)
    複数のグループを複数含むジオメトリデータから、特定のルールにマッチするグループを1つずつ個別に取得し、個別にバウンディングボックスに置き換える。

  3. Fetch FeedbackとFetch Pieceの組み合わせ
    ループに入力されたジオメトリに対し、別の入力されたジオメトリのピースを使って反復的かつ累積的に処理を行う事ができる。

    (例)
    穴あきチーズ
    複数の気泡オブジェクトを入力し、気泡オブジェクトのピースごとに、チーズの本体に累積的に繰り返し削り取る。


■forループ

Tab -> For loop

オレンジ色に囲まれた部分がforループのブロック

MountainSOPを挿入しHeightを0.1に変更
Block EndのIterationパラメータを変化させると、各ボックスが累積的に変形することが確認できる。

※同じ設定のMountainSOPで同一の処理を累積的に10回繰り返すことと同じなので、CopySOPの下流にMountainSOPを10個作って直列で繋げても同じ結果が得られます。


■for-eachループ

Tab -> For-Each loop

ピース単位の処理。
ピースは、ピースを表現するアトリビュート(通例では@name)の値の同一性により表現される。

For-Each loopを作成した直後は、上流に@pieceや@nameがないためにエラーが出る場合がある。このような場合は、自分でアトリビュートを作成する。

Voronoi Fracture SOPなど、自動的に@nameを作るSOPもある。
Voronoi Fracture SOPのデフォルト設定では、破片ごとにPrimitiveクラスの@nameを作成し、piece+番号の命名規則で各Primitiveが所属するピースを表現する。

@name以外のアトリビュートを使用してピースを表現したい場合は、Block End SOPのPiece Attributeを変更し、任意のアトリビュート名を指定する。

CopySOPで複製したBoxをVoronoi Fracture SOPで分割

For-Each loopにより、各破片のピースをバウンディングボックスに置き換え


■Block Begin SOP

・Methodパラメータ

  1. Fetch Feedback
    累積的に処理を行う場合に選択。
    ループが行われる度、前回のループで出力された結果を現在の処理対象としてフィードバックし、再Fetchする。
  2. Fetch Piece
    入力されたジオメトリ内のピースごとに処理を行う場合に選択。
    ループ毎に、認識されているピースの中から新たなピースがFetchされる。
  3. Fetch Metadata
    現在のループに関する情報をDetailsアトリビュートに持つジオメトリを作成する。
    detail関数を使ってこれらの値へアクセスし、ループ内で使用することができる。

・Block Pathパラメータ

このループの終点を示すBlock End SOPへのパス

・Create Meta Import Node

Metaデータを持つBlock Begin SOPを作成する。
この実態は、ModeがFetch Metadataに設定され、Block Pathが現在のループの終点にセットされているBlock Begin SOP。


■Block End SOP

・Gather Method

  1. Fetch Each Iteration
    ループが終わるたびに結果を再Fetchする
    ループのBlock Begin SOPでMethodがFetch Feedbackの場合に使用する。
  2. Merge Each Iteration
    ループ毎にジオメトリを記録し、最後に結合する。
    ループのBlock Begin SOPでMethodがFetch Pieceの場合に使用する。
    ピースは個別に処理され最後に結合され、結果として出力される。

・Iterations/StartValue/Increment

ループ回数の指定
一般的なforループで使用する変数

・Python風に書くならこんな感じ
for i in range(startValue , iterations , increment):


■Block Begin SOP – Fetch Feedback と Fetch Pieceの組み合わせ

あるジオメトリに対し、別のジオメトリを使って複数回の処理を累積的に行う事ができる。
Block BeginのヘルプにあるSwiss Cheeseサンプルでは、チーズ本体のVDBオブジェクトを一つと、気泡のVDBオブジェクトを複数入力し、チーズ本体オブジェクトを気泡オブジェクトごとに削り取る処理を行う。

  1. チーズ本体のジオメトリを作成
  2. 気泡ジオメトリを作成
    SphereSOPをPolygonなどではなくPrimitiveモードで作成。
  3. Scatter SOP + Copy SOPでチーズ表面に気泡をばらまく
  4. For loopを作成
  5. チーズ本体を受け取るBlock Begin SOPの設定を確認
    Methodパラメータ:Fetch Feedback
    Block Pathパラメータ : Block Endへのパス
  6. 気泡を受け取るBlock Begin SOPを追加
    Block Begin SOPを作成後、以下のパラメータをセット。
    Methodパラメータ : Fetch Piece
    Block Pathパラメータ : 1で作ったBlock Endへのパスをセット
  7. Block End SOPを確認
    Iteration Method:By Pieces(またはAuto Detect from Inputs)
    Gather Method:Feedback Each Iteration
    Piece Elements:Primitive
    Piece Name:オフ
    Default Block Path/Piece Block Path:Block Begin

 


■Block Begin SOP – Fetch Metadataの使い方

  1. Block Begin SOPを作成
    Method:Fetch Metadata
    Block Path:末端のBlock End SOPへのパス

・Detailsアトリビュート

  • numiterations
    最大のループ回数
  • iteration
    現在のループ回数
  • value
    Pieceループ時、現在ループ中のピースを識別するためのアトリビュート値。
  • ivalue
    valueの整数版。
    valueがfloatの精度範囲を超える場合などに使う。
    特別な理由がなければ普段はこっちを使うのがよさそう

・Metadataを取得する

ループ内でdetailエクスプレッション関数を使う。

  1. detailエクスプレッション関数を使う
    detail(“../foreach_begin1_metadata”, “iteration”, 0)
  2. detail VEX関数を使う
  3. Import detail attribute VOPを使う
  4. Pythonで取得する
    node(“../foreach_begin1_metadata”).geometry().attribValue(“iteration”)

■ループの停止条件

Block End SOP の Stop Condition を1にセットすると強制的にループを終了できる。


■デバッグとテストループ

・Feedbackループの場合

Block End SOP の Max Iterationsパラメータで最大ループ数を設定できる。
数回のループだけである程度結果が判断できる場合は、このパラメータを有効化することでループ処理を制限し、素早く調整が行えるので便利。

・Pieceループの場合

Block End SOP の Single Passパラメータでピース番号を指定して、ピースごとの処理結果を確認できる。


■グループからピースを作成する

グループパラメータを使ってピースを作成したい場合は、Name SOPを使用して@nameを作成し、グループ名をセットしておく。


何か間違いがあれば突っ込んでいただけると嬉しいです

Houdini Crowd System – 002 / Transition + ragdoll テスト

先日から続けているHoudiniの群衆シミュレーション勉強。
今回は、状態遷移とラグドールの勉強。

正直、かなりどうかしている映像になってしまったけど、今日の勉強の成果としてアップ。

使用したエージェントの状態は、待機5種+歩行+ジャンプ+ラグドールによるシミュレーションと言った感じ。歩き出しがぎこちないのは、待機モーションと歩行モーションのポーズ差が大きすぎるからで、こういう場合は中間モーションを作ったほうが良さそう(特に回し蹴りモーションからの歩き出し)

群衆シミュレーションだと、手前のキャラは手付けで動かし、群衆は大写しになりにくい上に、もっとエージェントの密度が高い場合が多いと思うので、もう少しだけエージェントの状態遷移がスムースになればかなり見られる絵が作れると思ったりする。

Houdini 15.5 から搭載された Agent Terrain Adaptation も試してみたい。